キーウ不動産、ウクライナ事業の一時停止

キーウでの不動産開発記事、第3弾。過去記事から先に見ていただくと、開発からの流れも理解も進むはずです。前回は不動産事業の立上げ、物件の選定、銀行送金、ウクライナの永住権、不動産視察ツアーについて書きました。今回はコロナショックがウクライナ事業にもたらした影響について。

コロナショックの発生、何に苦労したか?

2020年春に入り、コロナウイルスの蔓延に伴い、国境が閉まりました。ちょうど上の写真は2020年2月3日に現地での渡航時に撮影したホテルの写真。ロビーには誰もいません。私が現地を訪問したしばらく後に、国境が閉鎖されたようです。

WHOのパンデミック宣言の直後、ウクライナ側から「48時間後に外国人の入国を止める」という連絡が出て、別途永住権の申請のために組んでいた渡航は、直前で中止に。飛行機だけではありません。進んでいた工事も、確認申請も、一度にストップ。それが20年から21年にかけての動きでした。

この記事では、当時の中心案件だった「アパートメントA」(戦争の影響を考慮し物件名は伏字とします)を軸に、コロナ禍で何が起こっていたのかを紹介します。汚職や海外不動産の物件クオリティと戦った日々でもありました。

ウクライナ不動産開発・アパートメントA

当時、顧客向けに販売していた案件の一つが、キーウの「アパートメントA」。
ジムとプールを敷地内に備えた高級アパートメント(日本のマンション、東南アジアのコンドミニアムに相当)で、日本でセミナー開催し、お客様に販売していたプロジェクトです。

ウクライナ不動産という珍しい案件のためか、販売も現地視察も想定以上に好評でした。2019年の古い記事で紹介しましたが、現地通貨フリヴニャは対ドルで1/4まで下落し、外貨保有者にとって現地不動産を買いやすい時期でした。

この案件は、単に一部屋を売るだけの話ではありません。投資物件としての魅力に加え、条件を満たせば永住権(PRP)の取得が可能となる案件。興味本位で永住権を希望される方も多くいらっしゃいました。しかし、その全てがコロナ禍で急停止したのです。物件の工事も、永住権の申請も。

ウクライナでの不動産工事と企業経営

2020年4月ごろ、ウクライナ国内のロックダウンで、アパートメントAの工事は中断。当時は、世界中で都市全体が静かになっていった時期。

ウクライナ法人で重大な事件があり、2020年7月に、コロナ禍の現地へ私は急遽渡航しました。キーウでも街から人が消え、社会全体の時間が止まっているように感じました。日本や諸外国と同様に。

物件の工事申請や調整は仲間の日本人建築士に任せ、私は「重大事件」の対応に当たりました。平たく言うと会社の乗っ取りです。この事は、いつか別記事で書きたいと思います。

物件の話に戻ると、コロナ禍の遅延で半年以上を費やし、2020年10月に工事は再開。
同年12月に出した顧客向けの「ウクライナレポート」では、3階・5階・6階・7階が2021年4月完工予定と報告していました。許認可遅延や輸入物品の納入遅延で、工期は1年近く伸びたと記憶しています。

汚職や会計周りでの苦労

当時、ウクライナ不動産で大変だったのが、許認可を管理する国家建築建設検査局(GASK)から許認可を得る対応。アパートメントAは約200平米の部屋を、1LDKのサイズに小分けして販売するプロジェクトでした。

ダウンサイズはあまり、当時のウクライナでは一般的ではなく、GASKの立入調査が入り、現地法人代表が対応を求められる場面もありました。

ウクライナは汚職率が高い国の一つで、同機関も手強い相手。顧問弁護士も入り奮闘しましたが、許認可まわりのグレーさは新興国不動産の難所の一つ。私にはタイ不動産で経験があったものの、ウクライナはタイ以上に大変でした。

しかも厄介だったのは、建築許認可だけではありません。そのほかにも海外からの資金受領の説明やPE(恒久的施設)の問題など。最終的にはPwCとのタッグで解決を図りました。海外不動産は、買うところまでは見えやすい一方で、持った後の法務や税務会計のほうがずっと複雑です。

インスペクション(検査)の罠

2021年9月時点では、大雪やコロナ禍による建材の入荷遅延がありつつも、各フロアは徐々に完工。工事会社から物件を引き渡されますが、不備のある状態で物件を受け取るとロクなことにならないのが、海外不動産。

コロナ禍で日本人建築士が現地入りできない状況で引き渡しを受けると、瑕疵を見逃す恐れがある。私の専門であったタイ不動産も引渡し前にインスペクションという工程があり、建築会社によってクオリティはまちまち。ウクライナで大型プロジェクトの完工は初めてだったため、万全を期して臨みました。

日本人建築士が、現地へ渡航できるタイミングでインスペクション(検査)を行い、不備を修繕しながら建物の引き渡しを受ける。現地側の気の荒い作業員たちとコミュニーケーションを取りながら進める作業で、気を遣います。

こうして出来上がったウクライナの不動産物件は後日ご紹介します。今、思い出してもウクライナで物件を完成させるのはタイ以上に苦労がありました。しかしこの時はまだ良い方で、同国での企業経営の方が大変だとは気付いていないのです、、、