
2017年から2018年の年末年始で、インド北部の仏教8大聖地の一つ、サンカーシャを訪れました。ここは、ブッダが三十三天から降下した地として、崇められている場所。
サンカーシャとはどんな場所か
サンカーシャ(Sankassa / Sankasia / Sankasya)は、インド北部ウッタル・プラデーシュ州・ファルッカーバード県にある小さな町(村)で、ガンジス流域の平野部に位置します。外国人にとっては公共交通機関でのアクセスがなく、訪れるのが難しい場所。私は車をチャーターして訪れました。ウィキペディア
現在は静かな農村風景の中に、アショーカ王の石柱跡やストゥーパ遺構が残るのみですが、古代には仏教徒の重要な巡礼地として栄え、後述する「ブッダが天上界から降り立った場所」として知られてきました。ブッダが三十三天から降下したチベット仏教の「釈尊降臨大祭(ラバブ・ドゥチェン)」などの祭りもあります。【改稿】仏教版「母の日」、ラバプドゥーチェン
仏教「八大聖地」のひとつとしてのサンカーシャ
仏教には、ブッダの生涯と奇跡に結びついた「八大聖地(アッタ・マハータナニ)」があります。
- 4つの基本聖地
- ルンビニー(誕生)
- ブッダガヤ(成道)
- サールナート(初転法輪)
- クシナガラ(入滅)ウィキペディア
- +「奇跡の出来事」に結びつく4つの聖地
- ラージギル(怒れる象ナーラギリ調伏)
- ヴァイシャリー(猿から蜂蜜を受けた場所)
- シュラーヴァスティ(双身の奇跡)
- サンカーシャ(忉利天〈三十三天〉からの降下の地)
この8カ所を巡ることは、古くから「ブッダの一生を辿る巡礼」として尊ばれてきました。その終盤に位置するのがインド北部のサンカーシャ。アクセスは困難ですが、その分達成感はあるでしょう。
ブッダはサンカーシャで何をしたのか
忉利天での説法
伝承によれば、ブッダはシュラーヴァスティで「双身の奇跡」を示したのち、忉利天(三十三天)に昇り、亡き母マーヤー夫人に向けて上座部仏教の教理の核心であるアビダンマ(論蔵)を三カ月にわたって説法したとされます。ウィキペディア+1

天界からの「三つの梯子」の降下
雨安居(うあんご、仏教徒が雨季の約3か月間、外出を避け、一箇所に集まって集中的に修行や学問に専念すること、またはその期間)の終わり、ブッダは天界から人間界へ戻る際、
- 金の梯子
- 銀の梯子
- 宝石の梯子
という三本の階段を通って、サンカーシャに降り立ったと伝えられます。左右の梯子にはインドラ神と梵天が付き従い、中央の梯子からブッダが降りてきた――この劇的な場面は、仏画やレリーフでもしばしば描かれてきました。ウィキペディア+1
サンカーシャは、この「天界と人間界がつながった場所」として、八大聖地の中でも象徴的な意味を持っています。仏陀の右足が最初に地面に触れた場所に祠が建てられたようです。
サンカーシャの見どころ

現在のサンカーシャは、華やかな大寺院というより「静かな遺跡」といった趣きです。私が訪れたのは、2017年の大晦日。観光客はおらず、危険性はなさそうな野良犬数匹と本物かどうか判別できない僧侶が複数いました。もちろんお布施をねだられました。
- アショーカ王柱の遺構:マウリヤ朝・アショーカ王が建てた石柱の基部が残り、本来は頂部に象の柱頭が載っていたとされます(現物はラクナウ博物館所蔵)。ウィキペディア+1
- ストゥーパと僧院跡:ブッダの降下を記念して造営されたストゥーパや僧院の基壇が、土塁のような形で残っています。nalanda-insatiableinoffering.blogspot.com
- 「天の梯子」の伝承地:具体的な階段遺構は残っていないものの、発掘調査で古代の階段状構造物が見つかっており、「天界からの階段」と結び付けて語られることもあります。The Times of India+1
観光地化された他の聖地と比べると素朴ですが、そのぶん「物語だけが静かに残っている」ような、時間の止まった感覚を味わえる場所。立地が異なるため、訪れる際は目的地を予め決めておきましょう。私は「ストゥーパと僧院跡」を優先しました。

アクセス情報
位置と最寄り都市
- 州:ウッタル・プラデーシュ州
- 所属地区:ファルッカーバード県
- 近隣の都市:ファルッカーバード、カンナウジなどウィキペディア
デリー方面から
デリーからサンカーシャまではおおよそ車で5〜6時間程度の距離とされ、ルートはいくつかあります。The Times of India+1
代表的な行き方は:
- 鉄道+車
- デリー → ファルッカーバード(またはカンナウジ)まで列車
- 駅からタクシーやリキシャをチャーターしてサンカーシャへ(数十km)
- 専用車・タクシー
- デリー発の仏跡巡礼ツアーや、運転手付きタクシーをチャーターし、
サーンチー・サールナート・シュラーヴァスティなどと組み合わせて巡礼ルートに組み込む形が一般的です。The Times of India+1
- デリー発の仏跡巡礼ツアーや、運転手付きタクシーをチャーターし、

私のルート:「アーグラ駅→ラクナウ駅」まで約24h、運転手付きタクシーをチャーター
ニューデリー・インディラガンディー国際空港(23時着)→ニューデリー駅(朝8時頃発)→アーグラカント駅(12時過ぎ着)→駅でレンタカーチャーター→ボーンガオン(16時ごろ通過)→サンカーシャ・ストゥーパ訪問(17時着)→サンカーシャ泊→翌日ストゥーパ訪問(9時)→ラクナウ駅(12時着)
訪問のベストシーズン
- 推奨:10月〜3月の乾季・冬季
- 日中も比較的しのぎやすく、遺跡歩きに適した時期です。12月のインド北部は冷えるものの、それほどの辛さはありませんでした。
- 4〜6月の暑季は40℃近くまで上がる日も多く、炎天下での遺跡見学はかなり過酷になります。Encyclopedia of Buddhism
おわりに:物語の「余白」が残る聖地

ルンビニーやブッダガヤのような大きな伽藍や世界遺産的なスケールは、サンカーシャにはありません。
けれど、
- ブッダが亡き母に法を説くために天へ昇り
- 三本の梯子を伝ってこの地に戻ってきた
という、どこか「帰郷」にも似た物語が、この小さな村を特別な場所にしています。
仏教八大聖地巡礼を計画するなら、訪れる場所の一つ。アクセスの困難さや朝の深い霧の中で2度目の参拝をしたこと。八大聖地の中でも最も印象に残る場所になりました。