書評『テクノロジーの世界経済史』が教える生存戦略

はじめに AI革命と本との出会い

2024 年から 2025 年にかけて、生成 AI が急速に普及し、自律ロボット(フィジカルAI)の緩やかな拡大が、社会を取り巻く雰囲気を一変した。個人的にも、何気ない検索や会議での議事録作成まで、AI の手を借りるのが当たり前に。

そんな折に出会ったのがS先生から薦められた『テクノロジーの世界経済史』という本。蒸気機関からインターネット、AI に至るまでの技術と経済の関係を俯瞰する同書を読み進めるにつれ、「AI 革命の波の中で自分はどのように生きればよいのか」というヒントを得られたように感じました。

本書の読書の合間には ChatGPT に疑問を投げかけ、思考や要点を整理。本記事では、AIとの内的対話をもとに、AI 時代における雇用と幸福の行方、生き残るための差別化戦略について整理します。

歴史に学ぶテクノロジーの波

本書が示す最大の教訓は、技術革新が労働や社会に大きな変化をもたらしてきたということ。産業革命では蒸気機関が人力を置き換え、ラッダイト運動のような抵抗が起こりました。その後の電力革命、情報革命を経て、現在は AI やロボット革命が進行中。

各時代に共通するのは、新技術が熟練工や中間層の仕事を置き換え、仕事と資本の分配を変えてきたこと。本書ではガス灯に火を灯す人が、電気の普及で失職したことなど枚挙に遑がありません。失業は一時的に職人の賃金を引き下げ、格差拡大へつながります。つまり、革新的な技術に乗り遅れないことが重要

本書だけでなく、最近の研究でも、失業が幸福度を有意に引き下げることが示されていますjil.go.jp。日本を含む多くの国で同様の結果が確認されており、問題は賃金の多寡だけではない。「仕事があるかどうか」そのものが、自己肯定感や社会とのつながりに直結しているようです。

AI と自動化が広げる失業リスク

こうした歴史的な事実の延長線上に、いまの AI 革命があります。米国ブルッキングス研究所の報告では、生成 AI 技術が全労働者の 3 割超に影響し、その業務の半分以上が置き換え可能だと指摘されていますbrookings.edu

実際、プログラミング、翻訳などさまざまな作業が、 AI に大きく肩代わりされてきました。たとえば Google の AI Studio のようなツールを使えば、AI チャット機能付きの Web サービスを、専門知識のない個人でも短時間で形にできてしまう。Web 制作や情報提供ビジネスに携わる人は、「どこまでを自分の仕事と定義し直すか」を迫られているように感じます。

一方で、フィジカルな現場も安全圏ではない。MIT の研究によると、産業用ロボット 1 台の導入は、1,000 人あたりの賃金を押し下げ、雇用率も低下させることが確認されていますmitsloan.mit.edu。物流倉庫のロボットや、自律走行のトラック・建機のような「フィジカル AI」が普及すれば、今後 10 年でドライバーや単純作業者の仕事も確実に変質していくでしょう。

私が感じた危機感と核心

本書でこうしたデータを見ると、AI 革命はやはり「雇用」と「幸福」に直結する問題だと痛感します。自分の職が AI に代替されるかどうかはもちろん、マクロの失業率が上昇すると、不安や将来への悲観が広がり、社会全体の幸福感が下がるという指摘もあります。

一方で、本書は「技術の波のなかで誰が生き残ってきたか」という視点も教えてくれます。歴代の技術革命で優位に立ったのは、技術を恐れた人ではなく、活かす側に回った人、あるいは新技術に早い段階で資本を投じた人たちでした。

つまり、技術に取り残されない努力が必要であり、可能なら資本や環境を活かして、革新技術を利用したり投資する側に身を置くべきということでしょう。

AI 革命の時代においては、

  • 労働収入だけに依存しないこと
  • 小さくてもよいので、資本側のプレイヤーとしての足場を持つこと

が、長期的な選択肢を増やすうえで重要になっていくと、本書を読んで感じました。

AI 時代を生き抜くための問い

このような現状を踏まえ、自問すべき問いを挙げてみましょう。万が一、技術に取り残された場合、「地方に拠点を移す」ことが一つの解決策であると、本書では示唆されています。

  1. 自分の仕事は AI に代替されるか? ルーティン化した事務作業や定型的なデータ分析は、生成 AI によって効率化される可能性が高い。自分の業務がどの程度非定型か、そして付加価値を生み出しているかを点検する必要がある。
  2. 自分は AI を使う側か、それとも使われる側か? 単にツールとして利用するだけでなく、AI の仕組みや特性を理解し、新技術をアップデートできる人材であれば、AI による代替の波を乗りこなせるでしょう。基礎知識を身につけ応用していくことが重要です。
  3. フィジカル AI の波に備えているか? 自律ロボットの導入が進めば、ブルーワーカーも企業も安心できません。新しい技術との関わり方や投資先を再考することも必要でしょう。
  4. 再起できる環境を確保しているか? 再出発できる場所やネットワークを準備しておくことも防衛策の一つ。住む場所の自由度は以前より高まりました。米国の調査では、リモートワーカーの 22% が職場から離れた低コスト地域への移住を希望しており、移住先では生活費の安さが優先される傾向があると報告されていますamericanexperiment.org
  5. 労働以外の資本を持っているか? 技術進歩は労働所得の比率を低下させ、資本所得の比率を高めていますbrookings.edu。給与収入だけに頼るのではなく、株式、不動産、事業投資などを通じて資産を形成し、収益源を多様化すること。その意識が長期的な安定には不可欠でしょう。

まとめ:未来の波に飲まれないために

『テクノロジーの世界経済史』が教えてくれたのは、歴史のパターンを理解し、自らの選択で未来を切り開くことの重要性です。AI がもたらす恩恵を享受しつつ、失業や格差のリスクを直視すること。仕事を守るための学びや投資は、幸福を守るための防衛策だと位置付けること。地方での再起や資本形成といった安全装置を持つこと。本書を通じて学んだのは、このようなことでした。