タイのVAT(付加価値税)増税問題、2016年9月より1年据え置きを発表

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タイでは軍事クーデター後に発足した、現プラユット政権により税制改革が進められています。既に、土地・建物税(固定資産税)や相続税、贈与税については、内閣でのコンセンサスを得ており、国民議会に判断をゆだねるところまで法案の施行準備が進んでいます。

日本の消費税にあたるVAT(付加価値税)の導入も、ここ数年増税の動きが報道されています。過去には、「VAT10%課税」になるとの報道も。バンコクポストの記事より、ご紹介します。

タイのVAT(付加価値税)が増税される。現行の7%⇒8%に。

タイの国民議会

付加価値税(VAT)が来年少なくとも1%上昇するだろう。2015年会計年度に予定される、金融緩和に伴う12~13%もの支出増が要因だ。

Sommai Phasee財務大臣は、今回の措置はVAT税率上昇の第一歩目となるだろうと述べたが、物価上昇に関して、財務省の明確な方針はまだ決定されていない。「少なくとも1%税率を上昇させる必要があるが、2%かもしれない。税率については、さらなる議論の余地があるだろう」と、同氏は話す。

平和と秩序のための国民評議会(NCPO)は、プラユット政権発足直後に2015年9月30日まで、前インラック政権が導入した7%の軽減税率を維持することを承認している。国内消費の活性化を目指す政策の一環だ。

提案されたVAT(付加価値税)の引き上げは喫緊の議題で、「相続税」や「土地•建物税」は既に国民議会の承認を獲得している。前政権が支持率を維持するため 7%で据え置くことを選んだ事実から見て、付加価値税率を上げる動きは困難を伴うだろう。

VATの10%課税は1992年に導入されたが、税率が高すぎると感じた事業者の要請によりすぐに7%に引き下げられた経緯がある。

前述のSommai氏は、2016年の歳入が2兆3250億バーツに達するだろうと期待を寄せる。この増収は今回の税制改革、特に土地•建物税(固定資産税)だけでなく、VAT(付加価値税)の影響が大きいと見られている。

(出所:Bangkok Post “VAT set to be increased“)

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プラユット政権は税制改革に注力。財政再建なるか?

Prayuth_Jan-ocha_プラユット首相

タイでは、農村部に大きな票田を持つ前インラック政権が、「コメ買取制度」を導入。これは、コメ農家から「コメを相場以上の金額で買い取る」という、まさに人気取りのためだけの代物で、不要なコメ在庫を国が抱えたばかりか、コメ大国であるタイの輸出額を大きく減少させる悪手でした。

タイのコメ買い取り政策で巨額損失

一方、軍事クーデターで成立したプラユット政権は良くも悪くも、票をとるための政策は一切不要。民主化は2015年の予定がさらに延期され今後民政化に向けた再選挙が行われるはずですが、そこまではプミポン国王をバックに、政治改革を粛々と進めるだけです。

税制改革後の経済が悪化しないか、このかじ取りが非常に重要でしょう。しかし、民主政権下での政治家が改革を断行できない点を見れば、国家財政再建に取り組むプラユット政権は、後年大きく評価されていくような気がしています。

【追記 2016.9】
財務称長官に端を発したVAT増税の報道について、プラユット首相は「2016年から再度1年VAT税率を1年据え置きする」と声明を発表しました。詳細は以下NNA ASIAが報じています。
https://www.nna.jp/articles/show/1506926

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バンコク在住、タイ不動産のラ・アトレアジア(タイランド)元代表。2013年にバンコクへ移住し、不動産仲介会社設立。バンコクのコンドミニアム「168 Sukhumvit 36」をJV開発後、退任し日本に帰国。現在はウクライナ・モンゴル・ラオスなどの不動産事業を手掛ける。岡山県倉敷市出身。

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