ウクライナ不動産事業の立ち上げと法人設立

2017年から2018年にかけて、私は何度もウクライナの首都キエフを訪れていました。
当初の目的は観光でしたが、タイで不動産会社を経営する立場上、最初の訪問時に現地弁護士との打ち合わせでウクライナの不動産市場に歪みがあると感じたからです。

そこで調査を重ねた結果、不動産投資と、それを軸にした永住権(PRP)取得スキームの事業化を行うことにしました。現地での会社設立、銀行口座開設、不動産登記、さらには日本人向けの「法人+PRP+不動産」パッケージ。この2年弱は、その「土台」をひたすら積み上げていた時期でした。

今日はその備忘録として、当時の動きと、そこで感じたことを整理したいと思います。


キエフに通い始めた理由

東欧の中でも、ウクライナは少し特別な存在でした。

・欧州とロシアの間に位置する地政学
・高学歴層が多く、IT・エンジニア人材が豊富
・それでいて不動産価格や生活コストは、当時の感覚で言えば「割安」

こうした条件が重なり、「いまのうちに現地で足場を作っておく価値があるのではないか」と感じたのが、最初の動機でした。というのは、綺麗ごとで、独身だった私は世界一美女が多い国に興味を持っており、最初の渡航は仲の良い男性3名で渡航しました。


現地調査と事業体制づくり

最初のフェーズは、とにかく「歩いて、会って、聞く」ことでした。冒頭に書いた通り、仕事柄新しい土地に行くと、現地の専門家に会い情報を収集するのが習慣です。この時も単独行動させてもらい、事業進出なども手掛ける現地弁護士と打ち合わせをし、ウクライナでの事業の妙味に気づきました。

当時は現地通貨が、対ドルで1/4程度に下落しており、外貨を持つ身としては物価や不動産価格に優位性を感じました。当然、後年戦争が起きるとは思いもせず、、、

ウクライナ中央駅

大使館と現地専門家に会いにいく

そこで、観光からビジネス目線に転換し、2017年の夏から秋にかけて、再訪した独立広場周辺のホテルを拠点に、現地ミーティングを重ねました。
日本側のパートナーと合流し、在ウクライナ日本国大使館の経済担当書記官(当時)や日本語センターでの面談もさせていただきました。

同時に、一例ですが、

  • 現地進出コンサルタント(C社)
  • 法律事務所(Ex社)
  • 不動産仲介会社(RU社等)

といったプレイヤーとアポイントを取り、会社設立・銀行口座開設・不動産登記・税制に関する情報を集めました。

「机上の情報」ではなく、実際にやっている人の話を聞くことで、
・手続きの所要日数
・実務を回すうえでの“暗黙知”や”商習慣”

がだいぶ見えてきます。タイでの事業経験もあり、基礎的な内容は抑えられたので、次は法人設立の準備に入りました。

LLC(合同会社)設立の感触

2018年4月時点での感触としては、

・LLC設立は1〜2日で完了
・設立コストは 15,000 UAH 前後(当時レートで約6万円)
・月々の会計・維持費は 500ドル程度

という見積もりでした。

「思ったよりも簡素だが、ローカルパートナー無しで回すのは難しい」というのが、当時の率直な印象です。特に銀行口座の管理が外国人には難しく、遠隔での管理は難しいと判断しました。現地代表と顧問弁護士のダブル承認制でリスクヘッジを図ることに。


小さなアパートから始める不動産投資

現地の制度やプレイヤーを一通り押さえたあと、具体的な投資物件の検討に入りました。

27平米の築古アパート

ひとつ目の候補は、キエフ中心部にある築古の27平米ユニット
リノベーションは済んでいるものの、家具は無し。価格は約33,000ドル。
想定利回りは 10%前後で、「まずは一般的な賃貸管理の流れを学ぶ」ことを目的にした候補でした。

18平米のスマートハウス

学生向けアパートメントのキッチン

もう一つの候補は、学生エリアにある18平米のいわゆる“Smart House”
フルリノベーション済みで、家具家電もセット。価格は約28,000ドル。
こちらも利回りは 10%前後で、管理をすべて委託できるスキームが用意されていました。

特にこの物件は、現地に住む日本人のAさんの友人が暮らしており、お住まいも見せてもらうことができました。外国人留学生が多く暮らす物件です。

「自分で手を動かす練習台」としての築古27平米か、
「完全に仕組み化された箱」としての18平米か。

当時の私は、タイのコンドミニアム投資や、日本国内の築古不動産と照らし合わせながら、
“東欧版ワンルーム投資”としてどこまで成立するかを慎重に見ていました。

ウクライナ新築プロジェクトの購入に挑戦

2018年の夏には、具体的な新築プロジェクトに申し込みます。
キエフの「某Fxxxxx xxxxxxx 2」と呼ばれるプロジェクトで、39.5平米、約58,000ドルのユニットでした。スケルトンという配管以外何もない部屋で、内装工事の金額も見るのが目的です。

スケルトンのアパートメント例

しかし、資金を口座から送金する際、中央銀行での契約登録が必要となり、そこで時間を取られてしまいます。
手続きが遅れた結果、目を付けていたユニットは他の投資家に売れてしまい、
同じブロックの19階(約71,000ドル)のユニットに切り替え検討、という流れになりました。

この経験から、

「物件選びと同じくらい、資金送金のルート設計や準備が重要」

だという事実を、身をもって学ぶことになります。
結局、価格も高額になることから、本物件は見送りました。


永住権スキームというビジネスの種

不動産単体の投資と並行して、永住権(PRP)取得スキームの事業化も進めていました。
ウクライナでは、現地の法人に投資をすることで、永住権が取れるスキームがあります。

当時のアイデアは、

  • ウクライナの会社に投資
  • その会社を通じたビジネス活動を前提にPRPを取得
  • そこに「会社設立サポート+PRP申請+不動産購入」をセットにして、パッケージ化する

というものです。

現地コンサルタントとは、

  • 取得にかかる期間、手続き
  • 家族も含めた取得条件
  • 取得時のメリット/渡航回数等の注意点
  • 維持コスト

などをQ&A形式で細かく詰めていました。自身で取得する手続きも進めます。

この段階では、まだ「商品」として外に出せるレベルには達していませんでしたが、
ウクライナを“住む+投資する”対象として日本人にどう提案できるかという、ビジネスの骨格は見え始めていました。

現地の高級ベーカリーカフェ、表記の4倍が日本円相当額(当時)

日本とウクライナをつなぐ「人」をつくる

ウクライナで事業として続けていくには、最終的には「人」が必要です。

2018年の年末には、現地スタッフを日本の拠点に招き、一定期間働いてもらう計画も進めていました。
キエフ発の航空券と、日本での宿泊先の手配を行い、交流を深めました。

現地のことを理解し、日本側の文化も理解している人材が育てば、
ウクライナと日本を行き来しながら、不動産やPRPのサポートを行うブリッジ役になってくれるはずだと考えていました。このスタッフは今も現地事業の管理をし、一緒に働いてくれています。


当時の自分が学んでいたこと

この2年弱の「仕込み期」で、私が強く感じていたのは次のような点です。

  • ウクライナで事業をするなら、制度より先に“人”とのつながりを深めること
  • 不動産投資は、利回りだけでなく、送金・登記・管理のオペレーション全体で見ること
  • 永住権やビザのスキームは、法改正リスクを前提に「変わっても耐えられる設計」にしておくこと
  • そして、現地と日本をつなぐ「人」を育てることが、最終的なボトルネックになること

ウクライナという国は、政治・経済ともに安定した市場とは言えません。許認可を出す機関から賄賂を要求されたり、汚職もあります。現地でも、その後の実体験としても感じました。
それでも、だからこそ長い時間軸で準備しておく意味があると、当時の私は考えていました。

現在の戦争が終わり、いつか本格的な復興フェーズが来たとき、
このときの試行錯誤が、もう一度立ち上がるための“設計図”として、日本人によるウクライナ復興の役にたてば良いなと、改めて感じています。