「出国税」と「海外財産調書制度」、海外への資産移転に関する2つの制度

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キャピタルフライトと呼ばれる、海外への資産移転が続いています。タイ居住時には度々大不動産セミナーを開催させていただきましたが、参加者の半数近くが海外の不動産を購入されていました。

外国への投資は少しずつ日本でも広がっていますが、中でも富裕層は資産を海外へ移しています。多国籍通貨で資産保有は海外では常識。国の経済が悪くなった時のリスクを避けるため、複数の通貨で資産を保有するのです。

マイナンバー制度に代表されるように、増大する社会保障費等に対応すべく、日本国内の課税は年々強化されています。その状況下で富裕層をターゲットに制定された「出国税」とも呼ばれる国外転出時課税制度について、ご紹介します。

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日本で「出国税」が導入。海外へ資産移転時の課税強化始まる。

バングラデシュ NOVO AIR

「国外転出時課税制度」が開始されました。1億円を超える有価証券を持つ資産家が海外に移住する際、株式の含み益などに所得税を課す制度。別名、出国税とも呼ばれ、シンガポールやタイなど株のキャピタルゲイン税が無い国で資産を売り、課税逃れを防ぐための制度です。

例えば、1億円の含み益があるA株を海外転居時に保有している場合、含み益に対して15%が課税され1,500万円の納税義務があるという制度です。納税せず出国すると、加算税等が追徴課税されます。

シンガポール・マーライオン

シンガポールなどタックスヘイブン(租税回避地)への日本人永住者は1996年比で2.6倍に

海外移住だけでなく、1年以上の海外転勤や留学も対象です。1億円以上の含み益があるなら、有価証券の決済前に15%を納税しなさいという厳しい制度。未確定利益をどう徴収するか、そもそも徴収可能かすら不明ですが、今後海外へ出る資産家に対する徴税施策の一つとして導入されました。

対象となる資産は、株式や投資信託等の有価証券や未決済の信用取引など。現時点では、日本国内不動産の含み益に対しての課税はありません。

アメリカでも日本同様の「出国税」が徴収されています。米国では不動産も課税されるため、今後日本でも不動産の含み益に対する課税が始まる可能性が高いと言えるでしょう。

5,000万円以上の海外資産を持つ方が対象の「国外財産調書制度」

海外財産調書制度

ご存知の方も多いと思いますが、2013年より「国外財産調書制度」が日本で施行されました。同制度は5,000万円以上の海外資産を持つ人へ、「国外財産調書」を提出する義務を課す制度です。

国税庁の実地調査によると、国外財産の所得税や相続税の申告漏れは日本国内財産の約2倍。税務署は海外保有財産がある資産家への調査を強化しています。

「国外財産調書制度」のあらまし(国税庁)

国外財産調書の詳細は、国税庁の発行したチラシにて解説されています。ご参照ください。

海外への資産移転、キャピタルフライトは年々厳しくなっている

海外への資産移転は年々厳しくなっている

課税強化の話をしていますが、税金逃れを勧めているのではありません。懸念しているのは、今後いざ海外へ資産を移したいとなった時に今回の「出国税」のような網が設置され、思うように海外投資が出来なくなるリスクです。

冒頭でもお伝えした通り、複数通貨で資産を持つことは世界的な常識(コモンセンス)で、日本人は日本円だけで資産を持つリスクにもう少し敏感になるべきでしょう。ずっと日本で暮らす前提であれば、日本がデフォルトしない限り、資産分散する必要は無いかもしれませんが。

ギリシャの例など、万が一日本がデフォルト(債務不履行)した時に、拠点に出来る国もお金も無いのは怖いことです。現在はロシアのデフォルトも懸念されている状況であり、日本国民であっても漫然としている訳にはいかないでしょう。

「出国税」と「海外財産調書制度」まとめ

対キャピタルフライト課税

<出国税(国外転出時課税制度)>

  • 2015年7月から施行
  • 1億円超の有価証券を持つ資産家が海外移住する際、株式含み益等に所得税を課す制度
  • 海外出国時に含み益がある場合、含み益部分に課税される
  • 海外移住だけでなく、1年以上の海外転勤や留学も対象
  • 対象資産は、株式・投資信託等の有価証券や未決済の信用取引

「国外転出時課税制度 」のあらまし(国税庁)
富裕層の「出国税」きょう導入 海外移住に徴税の網 (Sankei Biz)

<国外財産調書制度>

  • 2013年から施行
  • 5,000万円以上の海外資産保持者へ、「国外財産調書」を提出義務を課す
  • 海外移住だけでなく、1年以上の海外転勤や留学も対象
  • 対象資産は、株式・投資信託等の有価証券や未決済の信用取引

5千万円超の国外財産所持、5539人 13年末時点(日本経済新聞)

※当記事は「出国税」および「国外財産調書制度」の概要を説明したものです。詳細につきましては、国税庁や税理士事務所等にご確認の上、ご自身で判断をお願いいたします。

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バンコク在住、タイ不動産のラ・アトレアジア(タイランド)元代表。2013年にバンコクへ移住し、不動産仲介会社設立。バンコクのコンドミニアム「168 Sukhumvit 36」をJV開発後、退任し日本に帰国。現在はウクライナ・モンゴル・ラオスなどの不動産事業を手掛ける。岡山県倉敷市出身。

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