タイでTPP参加への支持高まる、副首相も参加意向を表明

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タイでもTPP(環太平洋パートナーシップ)に参加する意向が日増しに高まっています。

TPPは米国主導で日本を含む12か国が参加。ASEANではシンガポール、マレーシア、ベトナム、ブルネイが加盟しています。タイも輸出入の競争力を高めるべく、経済界から参加意向が出ていますがどうなるのでしょうか?
『バンコクポスト』の記事を紹介します。

環太平洋パートナーシップ(TPP)協定とは,オーストラリア,ブルネイ,カナダ,チリ,日本,マレーシア,メキシコ,ニュージーランド,ペルー,シンガポール,米国及びベトナムの合計12か国で高い水準の,野心的で,包括的な,バランスの取れた協定を目指し交渉が進められてきた経済連携協定です。2015年10月のアトランタ閣僚会合において,大筋合意に至りました。今後,各国と連携しつつ,協定の早期署名・発効を目指していきます。
※出所:外務省ウェブサイト

タイのTPP参加支持高まる-最終決定前に徹底的な検討求められる

センセープ運河前の商店

雑貨類を取り扱うタイの商店(筆者挿入)

タイ商務省によれば民間団体、学者、経済界らは概してタイに昨年10月に環太平洋の12ヵ国が署名した「環太平洋パートナーシップ(TPP)」に参加してほしいと願っている一方、最終的な決定を出すまで政治家にはTPPがもたらす影響を慎重に検討するよう求めている。

「商務省は過去数ヵ月にわたり経済界、非営利組織、学者、農業や畜産業界と会合を重ねてきましたが、ほとんどがタイがこのTPPという新しい貿易圏に参加すべきだと述べています」商務省のWinichai Chaemchaeng副大臣は言う。

「しかし、特に2月から会合を行う予定の地方関係者など、他の関係者の意見も聞く必要があると考えています」と副大臣は付け加えた。

Winchai氏は特に経済界が、タイがTPPに参加することを積極的に支持しているとし、タイはTPPに参加すれば、特に米、砂糖、冷凍・加工エビ、マグロの缶詰、タピオカやデンプン、衣料品、宝石や宝飾品類、医薬品、航空輸送、メディカルツーリズム、直販の分野で競争力が高いだろうと述べる。

一方、農場経営者らはタイはまだ動物飼料の生産コストの面でTPP加盟国と競争することはまだできないとし、当局に良い点と悪い点の両方を検討するよう要請した。また、協定に参加することで影響を受ける分野に対しての救済策を考案することも促した。

TPPは米国が主導し、カナダ、メキシコ、ペルー、チリ、オーストラリア、ニュージーランドなど12ヶ国の間で締結された貿易協定だ。アジア地域における現加盟国は日本、シンガポール、マレーシア、ベトナム、ブルネイ。

TPP加盟国の経済は全世界の貿易高の約40%、年間295兆米ドルに達し、加盟国の合計国内総生産(GDP)は28.3兆米ドル、世界の合計国内総生産の38%を占める。協定には加盟国同士の関税の引き下げだけではなく、投資やサービス貿易に対する障壁の排除といった内容も含む。

さらに協定の加盟国らは知的財産(医薬品に関するデータ保護も含む)、政府調達、電子商取引や労働基準等、その他の貿易に関する論点においても合意している。

タイの貿易高における、TPP加盟12ヶ国の割合はあわせて40%を占め、外国直接投資(FDI)は年間45%を占める。一方、タイは米国、カナダ、メキシコを除くほとんどの加盟12ヶ国と自由貿易協定をすでに締結している。

カナダとメキシコが占める輸出全体の割合は1%未満、また両国からの外国直接投資はタイに年間通してもたらされる外国投資全体の2%未満だ。他方米国はタイの輸出の8%、また毎年外国直接投資の8%がタイにもたらされている。

タイがTPPに参加することで、もたらされる最大の潜在的効果は、米国市場におけるTPP加盟国と比較した競争力の向上だ。

輸出業者らはTPP加盟国の製品と比較してタイの製品に課せられる関税が高くなることから、米国に対するタイの輸出が、他のTPP加盟国の同様の製品と比較して競争力が弱くなることを懸念している。

Somkid Jatusripitak副首相は先月、タイは協定に参加する可能性が高いと述べた

(出所: Bangkok Post “Support growing for Thai TPP membership ” グロビジ!翻訳・要約・太字/下線処理)

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タイの証券会社による「環太平洋パートナーシップ(TPP)」への見解

  • 環太平洋12ヶ国によるTPPは、タイの輸出競争力を損なう可能性がある。既にタイは構造循環的な問題に直面しており、タイの輸出戦略の方向転換を決めることは、公共部門と民間部門の優先課題である。
  • TPP加盟国​​は、タイの貿易の約40%とタイへの直接投資の45%を占めている。既にタイは、米国、カナダ、メキシコを除くすべてのTPP諸国とFTA(自由貿易)の二国間協定を結んでいる。
  • 縫製業への直接的な影響が懸念される。さらにタイ国内の自動車部門は、長期的にその競争力を失う可能性がある。
  • TPPが有効になる日付を(すなわち、ゼロ関税率)と原産地規則の基準 – 商品の大手供給源は – 密接に影響を測るために監視する必要があります。  ※出所:KT-ZMICO社 ニュースレター

タイでは2012年に当時のインラック首相がTPP交渉参加の意向を伝えていたものの、2014年の軍事クーデターにより誕生したプラユット政権は参加を見送って現在に至りました。しかし、マレーシアやベトナムなどTPP参加加盟国にASEANの一大製造拠点を奪われることだけは避けたいとの意向から、一転して参加の意思を表明し始めています。

東南アジア各国はTPP大筋合意をどう受け止めたのか?タイやインドネシアは賛否が分かれ… (産経ニュース)

日本経済新聞によると、2016年1月28日にマレーシアはTPPへの批准を承認済み。参加予定のベトナムとマレーシアは、競争力が高まる結果、それぞれ10%と7%もの成長率が上乗せされると予測されています。

個人的には近い将来、タイはTPPに加盟すると見ています。但し、軍事政権から民政化への総選挙が2017年半ばに開催される予定で、国内情勢を短期間でまとめ上げられるかは微妙なところ。プラユット政権の政治手腕に期待するしかなさそうです。

【追記】 ASEAN諸国のTPP参加に関する大和総研の詳細レポート

TPP とアジア諸国(各国編) マレーシア、ベトナム、タイに及ぼす影響(大和総研)

興味のある方は、上記のリンクより参照ください。

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バンコク在住、タイ不動産のラ・アトレアジア(タイランド)元代表。2013年にバンコクへ移住し、不動産仲介会社設立。バンコクのコンドミニアム「168 Sukhumvit 36」をJV開発後、退任し日本に帰国。現在はウクライナ・モンゴル・ラオスなどの不動産事業を手掛ける。岡山県倉敷市出身。

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