ASEANの中間所得層は今後10年で2倍の1億2500万人へ。AEC発足を2015年末に控え

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AEC(アセアン経済共同体)の発足まで残り2か月となりました。AECとは大雑把に言えば、ASEANに加盟する10か国間で、ヒト・モノ・サービスの動きを自由化しようとする動きです。しかし実際に運用は開始されるのでしょうか?

ご存知の通り、ASEAN諸国では経済成長が進み、物価上昇や賃金の上昇などいわゆるインフレが進んでいます。アセアン経済共同体が発足し、ASEAN諸国はどう変化していくのか?タイの英字新聞『The Nation』の記事とともに、ご紹介します。

ASEAN経済共同体発足で、流通業者が恩恵を受ける

ASEAN MAP

今年の初めに発足するASEAN経済共同体の実現により、市場は一元化、貿易も自由化され、流通ネットワークを拡張させようとしている流通会社にとって大きなビジネスチャンスがもたらされるだろう。

DKSH Management (Thailand)のJonathan Guyett氏はASEAN経済共同体の設立により、企業らはより容易に資本を調達し、自由な労働力の移動により労働者を雇用し、国境を越えて製品を輸送し、域内のみでおおむねビジネスを展開することができるようになるという。

さらにASEAN経済共同体の発足でタイだけではなく、シンガポール、ミャンマー、マレーシア、ベトナム、カンボジア、ラオスなどASEAN経済共同体加盟国の主要部の道路網を開発するなど、域内での投資や交通インフラを拡大させることができるかもしれない。

「ASEAN経済共同体が企業らに前途有望な機会を提供することができると信じています。アセアン地域の人口は6億人以上。世界の11人に1人がアセアンに住み、2001年から2013年の間で国内総生産は300%以上の成長を遂げました」

「トップレベルの機関らは2015年の6,700万世帯と比較して、2025年にはアセアンの1億2500万もの数の世帯が中流階級に位置すると予測しています。中流階級は急速に拡大しており、より品質の高い消費財や健康管理用品を求めています」とGuyett氏は言う。

タイは中心的な場所に位置しており、地域のハブとしての立場をさらに発展させる可能性を秘めている。ASEAN経済共同体により、タイの企業らは近隣諸国へビジネスを展開しやすくなり、アジア内部の取引をさらに増加させることができるだろう、と氏は語った。

さらに税関プロセスにおける協調的な動き、やがて物品に対する免税につながると見込まれている。

(出所: The Nation “AEC a boon to distribution firms: DKSH” グロビジ!翻訳・要約)

ASEAN域内の中間所得層は今後10年で約2倍に

Siam Paragon Bangkok

タイを代表するショッピングモール、サイアムパラゴン(Siam Paragon)

最も注目すべきはアセアンにおける中間所得層の増加。2015年の6,700万世帯に対し、2025年には1億2,500万人がASEAN域内で中間所得層入り。日本では、単身で300万円~600万円の年収を持つ世帯が中間所得層と呼ばれ、このクラスに入ると消費購買意欲が活発になります。当然、地元経済にも好影響を与えます。

少し古い資料ですが、2010年に発行された『アジアの「内需」を牽引する所得層』(NIRAモノグラフシリーズ)では、アジア各国の中間所得層の伸びを各シナリオごとにまとめています。上記資料を見る限り、どのようなケースでもアジアの中間所得層は今後10年近くは堅調に伸びそう。

アセアン経済共同体(AEC)とは何ぞや?5分で分かる関税動向や影響まとめ。

なお、AEC(アセアン経済共同体)の基礎知識については、上の記事を参照ください。

中国が主導するアジアインフラ投資銀行の設立

後日詳しく書きますが、2015年末にはアジアインフラ投資銀行(AIIB)の発足も控えています。日本の報道でも新興国経済が減速などの報道が出ていますが、中国が減速した場合でも、アジア新興国のインフラ需要は年8,000億ドルと言われ大きな内需があります。2016年に入り、AECの影響で急激に経済が伸びるとは思えませんが、中長期で見れば東南アジアはこれから最盛期を迎えることでしょう。

ミャンマーの建設会社が品質に基づき格付けされる、アセアン経済共同体(AEC)を見据えた動き

上記のように、タイの隣国ミャンマーでもAECを控えて、ヤンゴン市内に2,000件ほどある違法建築を取り締まるべく、建設業者の格付けが開始される動きが出てきました。ここまで各国で2015年末のAEC発足に向けて準備を進めてますから、アセアン経済共同体という仕組みが2016年からスタートするのは間違いなさそうです。

<こちらの記事も合わせてどうぞ!>

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バンコク在住、タイ不動産のラ・アトレアジア(タイランド)元代表。2013年にバンコクへ移住し、不動産仲介会社設立。バンコクのコンドミニアム「168 Sukhumvit 36」をJV開発後、退任し日本に帰国。現在はウクライナ・モンゴル・ラオスなどの不動産事業を手掛ける。岡山県倉敷市出身。

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