
タイでAirbnbを使った不動産物件の空室利用に規制強化が検討されています。日本では「民泊」が許可制で一部解禁されますが、タイではホテル協会やコンドミニアム管理組合からのクレームで政府が対策を議論中。
Airbnb(エアービーアンドビー、通称:エアビ)は、個人が空き家・空き部屋を使い、利用者を泊めることで収入を得る民泊ビジネス。190カ国3万4千都市で150万以上の賃貸型宿泊施設が登録済。各地のリアルな不動産物件に泊まれ、私もたまに利用しています。
今日は、英字新聞『Bangkok Post』から、タイのエアビ事情に関する記事をご紹介します。
タイ内務省・観光庁らが、Airbnbに改善措置を検討
タイ王国の観光・スポーツ省と内務省は共同で、Airbnbを通じて賃貸型宿泊施設を予約する観光客の安全性に対する措置を考えるべく合意した。
現行のタイのホテル法では、明確にAirbnbが法律違反とは呼べない
しかし、現在のところ、Airbnbが促進するこのサービスがタイの法律を侵害するかどうかは明確にされていない。
タイホテル協会(THA)会長のSurapong Techaruvichit氏は、「Airbnbのウェブサイトを利用し日常的にコンドミニアム、自宅を賃貸するオーナーは宿泊施設を30日以下で提供しながらホテルの営業許可を持たないため、ホテル法を侵害しているとみなすべきだ」と語る。
30日未満の短期貸出は営業許可申請を要求
タイホテル協会は政府に対し、「所有する不動産を短期的に貸出したいとする全個人が、営業許可を登録してほしい」と求めた。「この提案が、新しい規則の制定や2004年のホテル法の改訂につながるようであれば、Airbnbのビジネスはタイの法律を侵害しているということになるでしょう」と、Surapong会長も語る。
サービスの安全性や納税面をAirbnbに対して指摘
同氏はAirbnbを通して賃貸型宿泊施設に宿泊する観光客の安全性にも懸念を表明した。ホテル経営者らは概して、安全性を確保するために観光客の情報を記録している。
「公平で合法であれば、いかなる障壁も築きたいと思いません。しかし、ホテルの営業許可なく日々客室を提供することは違法だ」と、Kobkarn氏は語る。「Airbnbについては納税も重要な課題です。ウェブサイトの提供者や、宿泊施設賃借人はホテル営業者らと同じ税金を納めるべきです」と、ホテル協会のSurapong会長も語った。
(出所: Bangkok Post “Airbnb draws scrutiny as hotels seek fairness” グロビジ!翻訳・要約)
タイにおけるAirbnb利用の実態 (2018年2月)
ドンムアン空港からバンコク都内へ向かう旅行者
ここからは、個人的な見解も含めタイにおけるエアビ利用の実態を、法律やコンドミニアム管理事務所の対応面から紹介します。
ホテル業法から見た省庁へのAirbnbの申告義務について
2018年2月時点における、Airbnb(エアビ)をつかった空室利用は、タイの法律を見てもグレーライン。私の会社の顧問弁護士事務所の見解によると、ホテル業法に抵触するどうか下記の回答がありました。
Ministry Regulation on Types and Requirement for Hotel Business B.E. 2551によりますと、以下の場合には「ホテル」に該当しないとのことです。
(1)全体として4部屋以下であり、かつ、
(2)合計20名以下のサービス用であり、かつ、
(3)代金をとって旅行者等に宿を提供するものであり、かつ、テンポラリーの提供であることテンポラリーの提供であることが記載されておりますので
(4)その目的が臨時収入(副収入)を得ることであり、かつ、
(5)経営者はその存在につき省庁の定めに従い登記事務所に通知をしなければならない
つまり、コンプライアンス重視で進める場合、管轄する省庁に申告する必要があります。確定申告や納税も考慮する必要があるでしょう。特に2015年以降Airbnbの知名度がタイでも向上しており、下記のように省庁以外のエアビ阻害要因も出てきています。
なお2018年6月には、タイ王室の保養地でもあるフアヒンにおいて、民泊業者に対する厳しめの判例も出ています。
タイのコンドミニアムにおけるAirbnb利用の実態
コンドミニアムの短期貸出を禁じる警告文 (パタヤ)
上の写真はパタヤのコンドミニアムに掲載されていた「短期貸出を禁じる警告文」です。Airbnb以外にも同様のサービスがあり、具体的にエアビとは言及していませんが、明らかに短期民泊を想定した文章。旅行者やバックパッカーへ、タイの法律では最低でも1ヵ月以上の賃貸を要求すると書かれています。
「1か月以上の賃借時は、受付へ申告をするように。未申告の場合は部屋オーナーが税務署や出入国管理局に通報される」と書かれています。こうした警告はパタヤのみならずバンコクでも見られます。
コンドミニアムの管理事務所は黙認も、管理規約でエアビ利用が禁止されるケースも
(上記写真出所:Bangkok Post “Airbnb hosting event for new strategy“)
私やスタッフによるヒアリングによると、「コンドミニアム管理事務所はAirbnb利用を知りながら、目をつぶっているケースが大半」。8割以上がこうした黙認物件ですが、例えばオンヌットにある人気プロジェクトなど、コンドミニアムの管理規約で既にAirbnb利用を禁止された物件もあります。
余談ですが、タイのコンドミニアムも法律で管理組合を設置することが義務付けられています。Airbnb利用者がリゾート気分で騒いで近隣の部屋とのトラブルが起こるなど、物件所有者にとってエアビが歓迎されていない部分もあり、禁止された物件も出てきたわけです。
タイ不動産へ投資する場合は、Airbnbに頼らない物件の運用力を考えるべき
タイ不動産を購入する場合、Airbnbの利用だけに頼る運用は非常に厳しいと言えるでしょう。例えば格安で買える10年落ちの中古コンドミニアムのリノベーションなどは、エアビ運用ならともかく、通常の賃貸にはあまり向きません。
なぜなら、タイ不動産は外観の修繕はさほど行われず、10年も経過すると外観は老朽化してきます。高級コンドミニアムに住む予算を持つ人々が外観の老朽化した物件を、賃貸として選ぶ可能性は低いのです。
古今東西を問わず、不動産は立地が重要です。バンコクで日本人が不動産を買うならばアソーク~トンローが鉄板で、次善はエカマイ~オンヌットでしょう。長期保有(5年~10年)なら空室リスクが高まりますが、オンヌット以東は開発が続くため価格の上昇が期待できます。
サイアム~プルンチットは欧米人向けや一部の日本人に賃貸できると思いますが、特にナナ駅は厳しいでしょう。歓楽街に加え、インド人街や中東人街があり、不動産投資にはあまり向きません。
エアビ利用を想定する場合、タイ不動産購入前のチェックポイント
結論として、Airbnbがすぐに禁止されることはないでしょう。しかし、物件の購入前に管理規約の確認はしておきたいところ。最終的にはエアビに頼らずとも、通常賃貸で貸し出せる物件が、売却という出口を考えた時にも安心。「入口×運用×出口」が重要です。
Airbnbを利用したことがない方は、まず実際に利用してみることをお勧めします。私も出張や旅行などで、実際の不動産物件を体験するために最近は頻繁に利用するようになりました。今なら、約4,000円分のクーポンもすぐ入手(登録無料)できますよ!
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