海外在住で「非居住者」となるには?180日ルール判定基準と税務を紹介します

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来タイされたお客様から、「今後は非居住者として一年の半分以上をタイで暮らす予定だが、税金はどうなるか?」というご質問をいただきました。

一般的に日本に住んでいないと判定される「非居住者」になるには、180日という滞在日数が基準となります。今日は「非居住者判定基準」と「非居住者の税務」について、国税局のウェブサイトを引用しご紹介します。

※国税に関する詳しい相談は、国税局もしくは税理士さん等へ直接ご確認の上、ご自身でご判断ください。相談窓口・連絡先等は記事の最後を参照ください。

「非居住者」になるための、180日ルールとは?

タイ・リタイアメントビザ

非居住者の判定について、国税局国際税務課の課員が書いた、『タイの税務行政と税制の概要』(税大ジャーナル2015.01)には、以下のような記載があります。

180 日の滞在基準で居住者の判定が行われ、居住者(タイ)については国内源泉所得及び国外源泉所得のうちタイに送金された所得が課税範囲となる。(タイの)非居住者は国内源泉所得のみが課税範囲である。 (※カッコ内は筆者注)

基本的には、一年のうち「180日を超えて住んだ国」が居住国ということになります。しかし、非居住者と判定されるには、単純に180日以上海外に住めば良いというわけではありません。

国税局による非居住者の定義

国税局のウェブサイトには以下のように書かれています。噛み砕いて説明すると、「180日以上海外に住んだだけでは、非居住者と認めないよ。生活の本拠になってるか、ちゃんと審査して判断するよ」という感じです。

我が国の所得税法では、「居住者」とは、国内に「住所」を有し、又は、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人をいい、「居住者」以外の個人を「非居住者」と規定しています。

「住所」は、「個人の生活の本拠」をいい、「生活の本拠」かどうかは「客観的事実によって判定する」ことになります。 したがって、「住所」は、その人の生活の中心がどこかで判定されます。ある人の滞在地が2か国以上にわたる場合に、その住所がどこにあるかを判定するためには、職務内容や契約等を基に「住所の推定」を行うことになります。
(出所:国税局 “居住者と非居住者の区分”)

上記、国税局のリンクを参照して頂くと分かりますが、国内法や租税条約等により「居住者と非居住者の区分定義」は異なりますので、ご注意ください。

非居住者かどうかを争った判例、武富士贈与税事件

例えば、武富士贈与税事件が最たる例でしょう。この事件では、武富士の元会長(故人)が香港在住の長男に対し行った1,600億円相当の生前贈与に対し、国が1,330億円を課税。当時の長男の住所がどこだったかを巡り、最高裁判決で長男側が「香港での滞在日数の割合は約65%」と認められ、勝訴しました。

訴訟では、海外居住者への海外資産贈与を非課税とした当時の相続税法に照らし、俊樹氏の住所がどこだったかが争われた。同小法廷は香港と日本の両方に居宅があった俊樹氏について、仕事以外も含めた香港での滞在日数の割合は約65%、国内滞在の割合は26%だったとして「生活の本拠は香港だった」と認定。そのうえで「税回避が目的でも客観的な生活実態は消滅せず、納税義務はない」と結論付けた。
(出所: 武富士元専務への課税取り消し 2000億円還付へ  日本経済新聞)

海外に暮らし、非居住者であることを望むなら?

誤解を恐れず、大雑把に結論づけてみましょう。もし「非居住者」であることを望むなら、180日ではなく一年の大半を海外で過ごし、海外にも仕事の拠点を作るなど、海外での収入も用意した方が良いでしょう。

国税局 “非居住者等に対する課税のしくみ”

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非居住者に対する税務について

日本円 非居住者の税務

「非居住者」として判定された場合、課税されるのは日本国内の源泉所得のみとなります。

非居住者及び外国法人については、日本国内で稼得した「国内源泉所得」のみが課税対象とされます。
(出所:国税局 “国内源泉所得の範囲” ※国内源泉所得の例は左記リンク参照)

例えば、180日以上をタイに滞在し「タイの居住者(日本の非居住者)」と認定された場合の税は、以下の通りです。タイ国内の納税はタイで行い、海外所得のうちタイに送金したものがあれば、それも課税されます。(冒頭の『タイの税務行政と税制の概要』の再掲します)

180 日の滞在基準で居住者の判定が行われ、居住者(タイ)については国内源泉所得及び国外源泉所得のうちタイに送金された所得が課税範囲となる。(タイの)非居住者は国内源泉所得のみが課税範囲である。
(※カッコ内は筆者が注釈を入れたもの)

 「非居住者」に関する180日ルール判定と税務まとめ

シンガポール・マーライオン

  • 一年のうち「180日を超えて住んだ国」が居住国 (180日ルール)
  • 「非居住者」と判定されるためには、一年の大半を海外で過ごし、海外に仕事の拠点を作るなど、海外での収入も用意するべき (「生活の本拠」が日本にあると判定されないため)
  • 「非居住者」として判定された場合、課税されるのは日本国内の源泉所得のみ

なお、既に「非居住者」となった方が、日本国内の不動産取引をする場合の税務については、三井トラスティのサイト(上記参照ください)に詳しく記載されています。

非居住者が不動産を売った場合・貸した場合 三井トラスティ

最後に、国税に関する詳しい相談は、国税局が「税についての相談窓口」を解説しています。下のリンクからお住いの地域ごとに電話相談窓口を設けてますので、ご自身の考えや当記事から判断されるのではなく、国や専門家の意見を元に自己責任でご判断ください。

国税局「税についての相談窓口」
日本税理士会連合会ウェブサイト

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更に、現在ではマイナンバー制度も開始されています。海外在住の非居住者は判断に迷う点も多いことでしょう。非居住者向けのマイナンバー問題については、下記でまとめておりますのでこちらもご参照ください。

海外在住の非居住者がマイナンバー制度で困る5つのポイント


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バンコク在住、タイ不動産のラ・アトレアジア(タイランド)元代表。2013年にバンコクへ移住し、不動産仲介会社設立。バンコクのコンドミニアム「168 Sukhumvit 36」をJV開発後、退任し日本に帰国。現在はウクライナ・モンゴル・ラオスなどの不動産事業を手掛ける。岡山県倉敷市出身。

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